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Morinomiya University of Medical Sciences Acupuncture Information Center

鍼灸学術情報

米国のアレルギー性鼻炎の診療ガイドラインに鍼治療記載

 2015年に発行された米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会のアレルギー性鼻炎診療ガイドラインには、治療方法にステロイドや抗ヒスタミン剤に加えて鍼治療も選択肢のひとつとして挙げられています。このガイドラインの目的は、アレルギー性鼻炎の患者さんの診療を行う臨床医が質の改善に取り組んで、患者ケアの最適化、有効な診断治療の促進、有害または不必要なケア手段の減少を目指すためのものです。様々な診断及び治療の選択肢について、今までにわかっているエビデンスと有害-有益のバランスの評価によって作成されました。[1,2]

 

 治療および害のエビデンスの質に関するグレード分類は以下の通りです。[1]

A:ガイドラインが対象としている患者に近い集団を対象として実施された、よくデザインされたランダム化比較試験(RCT

BRCT、あるいは観察研究から得られた明確で一貫したエビデンス

C:観察研究(症例-対照研究またはコホート研究)

D:メカニズムによる理論付け、または症例報告

 

 各推奨度の概略は以下の通りです。[1]

Strong Recommendation:有益性が明らかに害を上回っており、質の優れた強いエビデンスがある(グレードAまたはB

Recommendation:有益性が害を上回っているが、エビデンスはそれほど強くない(グレードBまたはC

Option:エビデンスが疑わしい(グレードD)、または良好に実施された研究(グレードAB、またはC)が他の治療法と比較して明らかに有用であるということをほとんど明確にできていない

No Recommendation:適切なエビデンスがない(グレードD)、または有益性と害とのバランスが明確でない

 

 以上のような分類と定義の下で、このガイドラインは局所ステロイドと経口抗ヒスタミン剤をStrong Recommendationとし、免疫療法をRecommendation、経口ロイコトリエン受容体拮抗薬をRecommendation (against) すなわち勧めない、そして鼻腔内抗ヒスタミン剤・併用療法、下鼻甲介切除、鍼治療をOptionとし、ハーブ療法はNo Recommendationとしています。鍼の部分の声明は、「臨床医(clinician)は、非薬物療法に興味があるアレルギー性鼻炎患者には鍼治療をするか鍼治療家(clinician who can offer acupuncture)を紹介してよい」と記載されています。Optionとされている場合、臨床医はそれが適切な治療であれば柔軟に対応すべきであるが制限を加えてもよい、また患者の好みを重視するとしています。つまり害が有益性を上回っていない限り、非薬物療法にも興味がある患者の価値観を重視するというEBMの姿勢を尊重しているわけです。

 

 分類の定義や本文を読むと、ここでのOptionはそれほど肯定的な意味でとらえているわけではありません。エビデンスのグレードはBとしていますが、エビデンスの示す信頼性はLowとし、通常の治療との効果の違いが明確に示されていないことを指摘しています。有益性としては、薬物治療の代用としての効果、症状の軽減、患者の価値観との調和、生活の質(QOL)の改善、薬物使用とそれによって起こり得る副作用の回避などを挙げています。しかし対照群の設定が一定でなく、メカニズムの研究も臨床効果とどのように関係しているか明確でないことが多いと指摘しています。

 

 しかしそれでも、国際的に質の良いエビデンスが示されていないハーブ療法(ほとんど中国の漢方薬の文献が検討された様子)がNo Recommendationとされていることと比較すれば、鍼治療の場合はかなり好意的にとらえられていることがわかります。この差は、国際的に認められる学術雑誌にRCTが掲載されているかどうかだということが本文を読めばわかります。鍼治療の場合は2008年以降にドイツのRCTと中韓共同のRCTの結果が良好で[3-5]、しかも有名医学雑誌に掲載された影響が強いのです。漢方薬もエビデンスが国際的な雑誌にもっと発表されれば今後判定が変わると思われますが、鍼治療のほうが洋の東西を問わず研究されているのでエビデンス情報の普及には量的にも質的にも優位なのが現状です。

 

ガイドラインのフルテキストはこちら

http://oto.sagepub.com/content/152/1_suppl/S1.full.pdf+html

 

サマリーはこちら

http://oto.sagepub.com/content/152/2/197.full.pdf+html

 

患者さん向けの平易な解説はこちらです(英語ですが)

http://www.entnet.org/sites/default/files/uploads/PracticeManagement/Resources/_files/allergic-rhinitis-plain-language-summary.pdf

 

 

1. Seidman MD, Gurgel RK, Lin SY, et al. Clinical practice guideline: allergic rhinitis. Otolaringol Head Neck Surg 2015; 152(1S): S1-S43.

2. Seidman MD, Gurgel RK, Lin SY, et al. Clinical practice guideline: allergic rhinitis executive summary. Otolaringol Head Neck Surg 2015; 152(2): 197-206.

3. Brinkhaus B, Witt C, Jena S, et al. Acupuncture in patients with allergic rhinitis: a pragmatic randomized trial. Ann Intern Med 2008; 101: 535-543.

4. Brinkhaus B, Ortiz M, Witt CM, et al. Acupuncture in patients with seasonal allergic rhinitis: a randomized trial. Ann Intern Med. 2013; 158: 225-234.

5. Choi SM, Park JE, Li SS, et al. A multicenter, randomized, controlled trial testing the effects of acupuncture on allergic rhinitis. Allergy 2013; 68(3): 365-374.