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Morinomiya University of Medical Sciences Acupuncture Information Center

MUMSAIC’s Opinion

「有害事象」と「副作用」「過誤」は違います

有害事象(adverse event)は治験では「医薬品が投与された際に起こる、あらゆる好ましくない、あるいは意図しない徴侯(臨床検査値の異常を含む)、症状、または病気のことであり、当該医薬品との因果関係の有無は問わない。」と定義されています。[1]

一方、薬の副作用(adverse drug reaction)は「病気の予防、診断もしくは治療、または生理機能を変える目的で投与された(投与量にかかわらない)医薬品に対する反応のうち、有害で意図しないもの。医薬品に対する反応とは、有害事象のうち当該医薬品との因果関係が否定できないものを言う。」と定義されています。[1]

医療において異なる定義が存在するのは好ましくないどころか危険ですから、鍼灸領域においても医薬品の治験における定義[1,2,3]に準じて有害事象と副作用の定義がなされています。したがって、有害事象には鍼灸と因果関係がないものも含まれています。過誤についても同様に扱われており、たとえば鍼灸の有害事象のデータベースにある感染や気胸の症例には、実は鍼灸と因果関係がないものも含まれています。因果関係を証明するのは折鍼や埋没鍼のような物的証拠がない限り非常に難しい場合が少なくないので、症例ごとに、施術との時間的前後関係、施術後から発症まで経過時間、施術前の当該事象の有無、有害事象を誘発しそうな施術内容であったか、施術者の事故防止の知識はあったかなど、個別に様々な角度から因果関係の可能性の大小を検討する必要があります。

全日本鍼灸学会の安全性委員会が行ってきた有害事象の症例報告文献レビューも、上記のような定義に基づいて行われています。

文献・資料

1. 薬審第227号 各都道府県衛生主管部(局)長あて 厚生省薬務局審査課長通知. 治験中に得られる安全性情報の取り扱いについて. 平成7年3月20日.
2. 
International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use. Clinical safety data management: definitions and standards for expedited reporting. ICH Harmonised tripartite guideline. ICH-E2A. 1994.
3. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA). ICH-E2. 臨床上の安全性. https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/ich/0024.html