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Morinomiya University of Medical Sciences Acupuncture Information Center

MUMSAIC’s Opinion

「EBM」と「エビデンス」は違います

 エビデンスはEBMの構成要素の一部です。これらを混同して「EBMは患者の気持ち・個別性や治療者の技術・経験を軽視している」と批判されることがあります。しかしEBMは、①臨床的状況と環境、②研究による臨床的エビデンス、③患者の好みと受療行動、を、④医療者の専門技能と経験、によって総合的に勘案し、患者が受け入れることのできる医療選択肢を示して提供することです[1]。したがって、医療者の臨床判断力や患者の意見を軽視するような医療のことをEBMとは呼びません。

 臨床経験年数が増えるにしたがって上記①③を見極めたり④を使いこなしたりするスキルは身につきますが、②を見つけて吟味する力は、文献検索や読み解き方を学んで自ら情報にアクセスしてみなければ上達しません。そのため、エビデンスはEBMの構成要素の中で鍼灸師がおそらく最も不慣れであり、敬遠されがちです。

 あるエビデンスが個別の患者に適用できるかどうかを見極めるのも臨床的技能のひとつです[2]。したがって、医療においてEBMを実践するためには、患者の姿が目に浮かぶ具体的な症例の経験も、質の高い臨床試験によって得られた集団のエビデンスも、そして医療者の臨床判断力も、いずれも欠かすことができないのです。

(山下仁『速修/現代臨床鍼灸学エッセンス』(錦房、2020)第1章「エビデンスを正しく理解する」より)
 
1. Haynes RB, Devereaux PJ, Guyatt GH. Physicians’ and patients’ choices in evidence based practice Evidence does not make decisions, people do. BMJ 2002; 324: 1350.
2. Sackett D, Rosenberg WMC, Gray JAM, Haynes RB, Richardson WS. Evidence based medicine: what it is and what it isn’t. BMJ 1996; 312: 71-72.
 
       Evidence-Based Medicine (EBM) の4つの構成要素