東都七福詣の内 金杉毘沙門乞(五風亭(歌川)貞虎 画、38×26cm、1830~1842年頃)
母親が男の子を両膝ではさんで、子供の右手にお灸をしている様子を描いた浮世絵です。 このような子どもへのお灸は、夜泣きをしたり、むずがったりする「かん虫」という症状への治療として江戸時代以前から広く行われていました。人さし指以外では、背中にお灸をすることが多かったようです。「お灸をすえる」ことは罰ではなく、ごく日常的なケアだったのです。
子どもへのお灸は全国的に広く見られますが、大阪ではお灸ではなく、鍼が一般的でした。「鍼」といっても、からだに刺すのではなく、皮膚をなでたり、リズミカルにたたいたりするもので、子どもが気持ちいいからまた受けたいとせがむことも珍しくなかったようです。「虫ばり」や「小児鍼」とよばれ、中秋の名月のときには「月見ばり」として、特に好まれました。
(「ここ+から」Vol.0 Autumn 2013より)