鍼治療の推奨度を記載している日本の診療ガイドラインの質の評価
Okawa Y, Yamashita H, Masuyama S, Fukazawa Y, Wakayama I
Integrative Medicine Research
2022;11(3):100838
doi.org/10.1016/j.imr.2022.100838
原文は
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背景
診療ガイドライン(CPG)の質は広く評価がなされるべきである。本研究では鍼治療の推奨度を記載している日本のCPGの質を評価することを目的とした。
方法
2021年10月までに国内で発行された鍼治療の推奨度を記載しているCPGを収集した。それらについて、①GRADEシステム[※1]に基づいて作成されたかどうか、②AGREE II[※2]を用いた質の評価、③各CPGが事前に定めた推奨度の定義と実際の鍼治療の推奨度決定に矛盾がないかどうか、を検証した。
結果
23の推奨度を含む17編のCPGが評価対象となった。①GRADEシステムに基づいて作成されたCPGは3編だった。②AGREE IIによるガイドライン全体の質の平均点は4.5点(7点満点)だった。各項目の平均は領域1(対象と目的)が77%、領域2(利害関係者の参加)が54%、領域3(作成の厳密さ)が48%、領域4(提示の明確さ)が78%、領域5(適用可能性)が20%、領域6(編集の独立性)が51%であった。③2つのCPGにおける鍼治療の推奨度が過小評価と判断された。なお、AGREE IIの評価には反映されない初歩的な問題を含むCPGも存在した。
結論
鍼治療の推奨度を記載している日本のCPGの方法論的な質は必ずしも高いとは言えなかった。各種療法にはそれぞれに特有の事情が存在するため、正確な医療情報を普及させるためにはそれぞれの療法の専門家がCPGの開発や監査に加わるべきである。
※1.GRADE (Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)システムはエビデンスの質と推奨の強さを評価するための透明性の高い方法で、診療ガイドライン作成のための標準的な手法となっている。
※2.AGREE (Appraisal of Guidelines for Research and Evaluation instrument) IIは診療ガイドライン作成における手法の厳密さと透明性を評価するツールで、6つの項目に分類された23の質問とガイドライン全体の質を評価する2つの質問で構成されている。