ウエスタンシドニー大学(UWS)の中医学科の臨床実習の例を調査しました。掲載した写真については施設の担当者の許諾を得ています。
シドニーの中心部から電車で1時間の郊外にあるこの大学は、医学部ほか各種医療職を養成する部門があり、その中に中医学コースも含まれています。UniClinicと名付けられた附属クリニックでは鍼治療、中薬(漢方薬)、足治療(あまり日本では知られていないがpodiatry)の3診療科が設置されています。患者さんは受付で、教員の指導の下に学生が治療する場合があることについて説明を受け、同意書にサインをします。前回紹介したUTSは口頭での同意でしたので、インフォームド・コンセントの取り方は必ずしも統一されてはないようです。
安全教育の指導内容は教科書や文書よりもむしろ実地でマンツーマンの指導をすることに力点を置いていると担当教員は語っていました。また、自分が経験したり見聞したりした「怖い話」(horror stories)を聞かせて安全管理に対して強い印象を持たせているとのことでした。対応してくれた教員にもよるかもしれませんがUTSが体系的にまとめた項目にもとづいて指導している点を強調していたのと対照的であり、これらの両者をバランスよく導入することの必要性を感じました。
安全面ではやはりsharps(鍼のように鋭利なもの)の廃棄に特別の注意を払っていました。個人開業の鍼灸クリニックでも医療廃棄物は地域の収集場所に持っていくことが義務化されているそうです。また、抜いた鍼をどこかに置いてから廃棄用容器に入れたりするのはリスクが増すので厳禁です。ところで日本でも話題になりますが、鍼の「single use」は1人の患者に使ったら廃棄することなのか、それとも1回刺したら同じ患者でも再び刺さないで廃棄することなのかについては、どっちか微妙だな~と言っていました。
オーストラリアの状況の詳細は他の国の情報と併せて今後の日本の鍼灸安全教育のコンテンツ案に含め、多くの専門家の意見を聞いてまとめていく予定です。
- UniClinic入口
- 鍼治療個室(ドア付き)