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Morinomiya University of Medical Sciences Acupuncture Information Center

鍼灸学術情報

iSAMS 2014 Tokyo 情報

鍼の国際学会「iSAMS 2014」が10月3日~5日、昭和大学上條講堂で開催されました。
iSAMS 2014 (International Scientific Acupuncture and Meridian Symposium 2014)
http://www.isams.org/2014/main/main.html

国内外の鍼灸研究者がミニレクチャー形式で最新の情報を伝えるとともに、ポスターによる研究発表も行われました。以下に抄録と発表内容から抜粋して紹介します。

高血圧に対する電気鍼のランダム化比較試験の結果より。高血圧患者に間使ー内関と足三里ー上巨虚の鍼通電をして血圧降下が見られる患者は、治療前から血中ノルエピネフリンとレニン活性が高く、これらとアルドステロンは治療後に低下する。交感神経系とレニン系が活性化している患者か否かで、電気鍼が効くかどうかを予測できるかもしれない。
(Longhurst J, University of California, Irvine )

肺がんによる呼吸困難の患者のランダム化比較試験より。鍼群、モルヒネのみ群、鍼+モルヒネ併用群に割り付け。鍼は胸骨上部の2点に留置鍼(円皮鍼のようなもの?)して揉んで刺激した。有効率はそれぞれ76%、56%、68%。
(Filshie J, et al. The Royal Marsden NHS Foundation Trust, London)

Individual patient data meta-analysis(Vickers AJ, et al. Arch Intern Med 2012)のSecondoary analysis(MacPherson H, et al. PLoS One 2014)によると疼痛に対する鍼の効果量は、真の鍼vs貫通しない偽鍼のRCTよりも真の鍼vs貫通する偽鍼のRCTほうが小さくなる。つまり貫通する偽鍼は治療効果がありすぎるのでRCTの対照群として使うべきではない、と。
(Irnich D. University of Munich, Germany)

ラット結腸伝播運動をX線不透過性マーカーを用いて測定すると、拘束ストレスでは60分以内にすべてのマーカーが排出されるが、拘束ストレスに足三里相当部位への電気鍼を加えると排出は遅延し、120分まで測定できた。ストレスでトイレに行きたくなる反応に鍼通電が有効かも、と。
(Imai K et al. Meiji Univ of Integrative Medicine, Kyoto)

会陰部への非侵害性刺激による排尿収縮抑制は、皮膚に接触する素材によって異なり、柔らかい弾性表面は有効だが硬い表面は効果がない。ラットで受容体拮抗薬の影響を調べた結果、低閾値皮膚機械受容性の有髄および無髄線維の興奮が脊髄のオピオイドを活性化することによって、膀胱-骨盤神経交感神経反射を抑制すると結論。
(Hotta H. Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology)

Hottaのラットによる知見にもとづき、柔らかいあるいは硬い表面を持つ2つの異なるローラーを用いてクロスオーバー・ダブルブラインドRCTを実施。夜間頻尿のある高齢女性を対象に就寝前にいずれかのローラーで自分で会陰に刺激を1分間与えてもらった。その結果、過活動膀胱をもつ被験者においては柔らかいローラーのほうが夜間頻尿回数が有意に減少した。
(Iimura K et al. Teikyo Heisei Univ)

ヒトのC線維機械熱ユニットは、真の鍼、円皮鍼、皮膚を貫通しない鍼(すなわちシャム鍼と呼ばれるもののひとつ)のいずれによっても興奮または抑制を示したが、シャム円皮鍼では見られなかった。すなわちシャム円皮鍼だけが不活性であり、円皮鍼のシャム対照RCTは可能であると思われる。
(Kawakita K, et al. Meiji University of Integrative Medicine, Kyoto)

ラット前肢足蹠の鍼刺激は3年齢の高齢ラットでも脳血流増加反応が誘発される。高齢者や脳血流障害の患者に対して脳内コリン作働性血管拡張系を活性化させるために鍼が適用できるかも、と。
(Uchida S. Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology)

麻酔下ラットの脊髄血流を脊髄背側表面に置いたレーザードップラー血流計プローブを介して測定。血流測定している髄節レベルと同じレベルに入力する同側皮膚にブラシ刺激を加えた際に脊髄血流増加が起こり、脊髄切断後も認められた。後肢足蹠への鍼通電によりL4~6脊髄血流は刺激頻度および刺激強度依存性に増加した。
(Kurosawa M & Shimoji R. Int'l Univ Health Welfare, Otawara)

血管やリンパ管のように全身に行きわたる新しく発見された循環システム をthe Primo Vascular System(PVS)と呼ぶ。リンパ流や内臓表面のサブシステムは確認されており、皮膚のPVSは確認されていないが、ボンハン管やボンハン小体、あるいは経絡は、このPVSの一部ではないかと考えている。PVSの管の直径は20μmと小さいため過去に認識されなかったのでは、と。Primo node内の細胞は免疫細胞、特に肥満細胞が多い。
(Soh KS. Seoul National Univ, Korea)

来年のiSAMS 2015はニュージーランドで開催されます。
昭和大学上條記念講堂