(鍼治療の推奨度が掲載されている診療ガイドラインに関する最新情報(2023年9月現在)は
こちら)
診療ガイドラインとは、「診療上の重要度の高い医療行為について、エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価、益と害のバランスなどを考量して、患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書」のことです[1]。近年、鍼治療を検証するランダム化比較試験(RCT)の結果が多く発表されるようになった状況に伴い、国内外の診療ガイドラインで鍼治療についての推奨度や記載が見られるようになりました。
診療ガイドラインは医療者、患者、そして社会や政策に多大な影響を与えます。しかし診療ガイドラインにおける鍼灸治療の記載内容は必ずしも正確ではなく、また、鍼灸独特の
事情(偽鍼対照RCTで得られる効果量の意味など)を考慮していません。鍼灸に詳しい専門家が診療ガイドラインの作成や評価に加わったり定期的に出版された診療ガイドラインの記載が適切かどうかチェックする必要がありますが、同時に個々の鍼灸師が鍼灸に関する記載内容の問題点について説明できるようになっておくことが理想です[2]。
診療ガイドラインは、①ある疾患・症状に対する多くの治療選択肢に鍼治療が含まれるかという医師・患者側の観点と、②鍼治療が選択肢として採用された場合にどのような鍼治療が最も有効かという鍼灸師側の観点の2つの診療ガイドラインが考えられます。中国・韓国では②も出版されているようですが、流派の多い日本鍼灸の世界で合意・結論を得るのはなかなか難しそうです。とりあえず①にエビデンスに基づく適正な評価が掲載されるかどうかが鍼灸の情報発信にとって重要と思われます。
2021年5月までに出版された診療ガイドラインのうち、鍼に関する推奨度または記載のあるものをまとめてみました。6月には慢性疼痛診療ガイドライン(慢性疼痛治療ガイドラインの改訂版)が出版され、ここにも鍼治療についての推奨度および記載があります。他にも見逃している可能性がありますので、情報をお持ちの方がいらしたらご教示ください。
1. 小島原典子, 中山健夫, 森實敏夫, 山口直人, 吉田雅博 (編集). Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017. 2017年12月27日版. 東京. 日本医療機能評価機構EBM医療情報部. 2017: 1-10.
2. 山下仁. 診療ガイドラインを注視する. In: 速修 現代臨床鍼灸学エッセンス. 錦房. 2020: 25-30.