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鍼灸学術情報

全日本鍼灸学会における高久史麿日本医学会長を交えた記者会見

 2015年5月23日(土)、福島県郡山市ビッグパレットふくしまで開催された第64回(公社)全日本鍼灸学会学術大会ふくしま大会において、記者会見が行われました。会見では、後藤修司 全日本鍼灸学会長による挨拶、学会理事による鍼灸の概要説明の後、高久史麿 日本医学会長・福島県立医科大学会津医療センター長、三潴忠道 ふくしま大会会頭・会津医療センター漢方医学講座教授からコメントがありました。
 
 高久センター長は、COPDに対する鍼治療のランダム化比較試験(RCT)の論文がArchives of Internal Medicineに掲載された(Suzuki M, et al. 2012; 172(11): 878-886)のを知って鍼に興味を持ち調べてみると、アメリカでは多くの医師が患者に鍼治療を勧めていることを知ったので、鍼灸の研究を推進するとともに多くの人に鍼灸の有効性を知ってもらう努力をしたらいいのではないかと考えてこのような会見の機会を設けてもらったと述べられました。
 
 三潴会頭は、現代医学でも漢方薬でもうまくいかなかった症例で鍼治療が有効だった症例を何度も経験したことから、過去を振り返り、現在を認識し、未来に向かってどう羽ばたくか、その可能性の一端に触れる機会にしたいと述べられました。
 
会見の中で説明された鍼灸の概要は次の通りです。
 
(以下、プレスリリースより抜粋)
 
【メカニズムについて】
 
 鍼灸刺激を行うと、局所組織に微少な損傷が生じるとともに神経が興奮する。この神経興奮が引き金となり、刺激局所の血流が改善したり(軸索反射)、血流改善により集まった修復細胞が鎮痛物質を放出することで鎮痛が起こったり(末梢性鎮痛)、免疫細胞の一部が活性化することが知られている。神経の興奮は脊髄に伝わることで痛みなどを伝える他の神経情報を遮断することも知られている(ゲートコントロール説)。
 
 一方、鍼灸刺激は痛みや情動をコントロールする脳エリアを興奮させることが知られている。これらの脳エリアが興奮すると、体内に備わっている自己鎮痛システム(下行性疼痛抑制系)が賦活することで痛みが軽減する。また、情動と関係する神経伝達物質(セロトニンやドーパミンなど)により気分が調整されることを示唆する研究報告がある。さらに、鍼や灸による刺激は痛みや情動だけでなく、脊髄(体性-内臓反射)や脳を介して消化器系や循環器系その他多くの内科系疾患の症状改善が期待できる。刺鍼部位とは離れた身体部位や内臓に効果が及ぶのはこのようなメカニズムによる。
 
【臨床応用について】
 
 EBMの概念の普及は鍼灸領域においても例外ではなく、特に欧米先進国において実施された比較的規模の大きいRCTによって鍼治療の臨床的エビデンスが蓄積されつつある。RCTのシステマティック・レビューによって鍼治療の臨床効果に肯定的な結論が下されているのは、慢性腰痛、緊張型頭痛、片頭痛予防、頸部障害、妊娠中の腰痛・骨盤痛、原発性月経困難症、術後の嘔気・嘔吐など。鍼の臨床試験においては、薬剤の臨床試験の際に用いられるプラセボ錠に相当する対照群のデバイスとして伸縮型の偽鍼(sham acupuncture needle)が開発され、RCTに用いられるようになっている。しかし試験結果の解釈にあたっては、偽鍼が不活性なプラセボ錠とは違って生理的に活性である(少なからず臨床効果がある)ため真の鍼との差が出にくいことに留意が必要である。
 
 蓄積されてきたエビデンスを踏まえて、近年では鍼治療を推奨度AまたはBとして掲載する現代医療の診療ガイドラインも見られるようになった。英国国立医術評価機構(NICE)の診療ガイドラインでは、持続性・非特異性腰痛および頭痛(片頭痛と緊張型頭痛)に対する鍼治療の選択を推奨している。
さらに近年は、補完代替医療や統合医療が世界的に注目されている時流の中で、現代西洋医学と併用して患者さんの症状軽減やQOL改善を目的とした鍼灸治療が応用され、臨床試験の良好な結果を踏まえてCOPD(慢性閉塞性肺疾患)やがん患者などの苦痛緩和に対する鍼灸治療の導入も試みられている。
 
 安全性に関しては日本、イギリス、ドイツなどで大規模な安全性の前向き調査が行われ、標準的な鍼灸治療で重篤な有害事象が発生することは稀であることが確認されている。
 
 東日本大震災の際には、多くの被災者が避難所や仮設住宅で不自由な生活による心身の不調を訴えられた。疲労感や身体各部の疼痛だけでなく、不眠や不安など心に関連した深刻な愁訴も多い被災者のケアのために鍼灸ボランティア活動が展開され、多くの被災者の疲労感、疼痛、不眠、不安などに対して鍼灸治療が用いられた。この経験から、医療物資が十分でない状況下で、鍼灸治療が身体症状や心のケアの手段のひとつとして有用であることが示された。今後、医療機関や地域医療と鍼灸師の連携が期待される。
 
(以上、プレスリリースより抜粋)
起立してコメントする高久史麿日本医学会会長、その左が三潴忠道教授、右が後藤修司全日本鍼灸学会長